法人・テナント向けトイレメンテナンス(トイレ診断士)事業を1995年に一人で創業。2005年に通信事業へ参入し携帯ショップを運営、2010年よりソフトバンクショップ、auショップの運営を開始。
現在は年間売上高70億円、社員数200人規模(2026年2月現在)の会社に成長を遂げ、ソフトバンクショップの顧客満足度調査では日本一を獲得。大手経済誌からの取材や大学での連続講座の依頼など、業界内外から注目を集めるCSリレーションズ株式会社 代表取締役社長 増田恭章さんにインタビューしました。

- 一人で飛び込み営業。「トイレ掃除させてください」と頭下げて、ピカピカに磨いた。
- 仲間が欲しかった、とにかく仲間が欲しかった
- 「絶対無理!」と言われた通信事業に進出するも、社内はゴタゴタ
- 経営計画書との出会い。5万円の経営計画書を後輩と割り勘で買う。
- 「いつまでおれはこんなことやってんだろう」から抜け出せた。
- 唯一経営者として自慢できるのは、利益の使い方。新店舗出店、採用費、教育費、人件費と会社の未来に全部使ってきた。
- どうして投資できないか、失敗したくないと思ってるから。採用も失敗の繰り返しから。
- コロナ禍でコミュニケーションの質が低下するなど課題が山積み
- 権限委譲という最大のテーマ、そして最大の壁
- 日本商店会の良さ、勝川会頭に期待すること
一人で飛び込み営業。「トイレ掃除させてください」と頭下げて、ピカピカに磨いた。
1995年法人・テナント向けのトイレメンテナンス事業で起業しました。飲食店やパチンコ屋さんの店舗のトイレ掃除ですね。一人で立ち上げたので当然一人で営業から掃除、売上金の回収まで全部やりました。
もちろん飛び込み営業です。いろんなお店で「トイレ掃除させてください!」と頭を下げ続けて、OKもらえたらうれしくて精一杯磨きました。20代の若いお兄ちゃんが一生懸命トイレ掃除しているわけです。いま思うと可愛いですよね。先方の社長や店長に「兄ちゃん元気でいいね。また来てよ。」と言ってもらえることが少しずつ増えてきて、事業も軌道に乗ってきました。
仲間が欲しかった、とにかく仲間が欲しかった
一人目の従業員は妻です。電話番や雑務をやってくれました。その後、弟、親戚と少しずつ増えましたが、実質ほぼ一人で動いている状態でした。充実はしてましたが満足できない。なんでかなと思うと、新規受注!とかお客様に褒められた!とかを誰かに共有したかったんです。簡単に言うと、寂しかったんですよね。それもとてつもなく。
そんなときある先輩の会社から「ヘルプで入れる?」と連絡があり、先輩と一緒に仕事をする機会がありました。そのときに先輩の会社は10人15人くらいでしょうか。みんなで同じユニフォーム着て昼休みも楽しそうに話していて仲が良くて。そのシーンをみたときに心の底から「うらやましい!仲間が欲しい!」と強烈に思いました。
給料ゼロから始めてようやく月50万円くらいもらえるようになったのに、自分の給料を25万円に減らし浮いた25万円で一人採用、また50万円もらえるようになったらまた25万円にして一人採用、その繰り返しでした。とにかく仲間が欲しかったんです。その繰り返しで創業から10年かけてようやく15人くらいの規模まで成長できました。
「絶対無理!」と言われた通信事業に進出するも、社内はゴタゴタ
セオリーとか正攻法じゃなくても、熱量で勝つ
トイレアメニティ事業は持ち前の元気と明るさと清掃品質が評価され、おかげさまで安定して黒字を出せるようになったのですが、やっぱりもっと仲間が欲しいと思ったときに、どうしてもトイレの事業では採用も苦しいのが現実でした。そんなときにたまたまご縁があっていわゆる「携帯ショップ」をやってみようかな、と思ったんです。
ただ実際に検討すると周囲は猛反対。「参入が遅すぎる」「儲からない」と言われ続けました。たしかに販売手数料は全盛期の4分の1に値下げされ、一番大事な立地もいいところは全部押さえられていました。やっと見つけた物件は、新松戸という駅から徒歩20分、駐車場なし、駅からうちの店までに競合店が10店舗以上。普通に考えたら勝ち目はありません。
でもなんか一顧客として大手の店舗に行くと「うちの会社が同じ仕事を、トイレメンテナンスで評価されている明るい接客でできたら、もっとお客様に喜んでもらえるな。」という実感があったんです。根拠はないけど絶対にやれる!そして仲間も欲しい!と、熱量と勢いで参入しました。
自分たちでチラシ撒いて、もう時効ですが、車で来店されたお客様には駐車場はないので店舗前に路駐してもらって(笑)。まさに熱量しかありませんでした。
仲間を増やすための挑戦のはずなのに逆に仲間が減っていく
会社の未来のために踏み出した挑戦でしたが、そんなに簡単にうまくいくことはありません。通信事業は赤字体質で苦しかったです。そしてその赤字をトイレメンテナンス事業の利益で補填、すると会社としては利益が減るので賞与も少なくなって・・・となると、トイレメンテナンス事業のメンバーはおもしろくないわけです。余計なことして賞与減って、と。そして人が辞める。
スタッフからは「社長の言うことがころころ変わる」「言ってることがよく分からない」「ついていけない」と言われる始末。いや伝えてるじゃん!といくら社長が思っても、伝わってなかったということは伝えてなかったんですね。
仲間を増やすための挑戦のはずなのに逆に仲間が減っていく。これは本当につらかったです。
経営計画書との出会い。5万円の経営計画書を後輩と割り勘で買う。
新規事業はうまくいかない、人も辞める。途方にくれていたときに、ある会社の「経営計画書」というものがあり、それを導入すると、事業もうまくいくし人も辞めないという情報を耳にしました。そんな魔法のようなものがあるなら絶対に欲しい!と調べたら、なんと5万円。「買えねー」って思いましたね。でもどうしても欲しい。そこで後輩に電話して「魔法の本があるから半分ずつ出そう」と無理やり誘い、2万5千円ずつ出し合い購入しました。それでも本一冊で2万5千円ですからね。よく出したと思います。それほど苦しんでいたんでしょうね。
本を手にしたときの興奮は今でも覚えています。子供が憧れのスポーツ選手のサイン入りボールを手にしたような感じです。ほぼ丸写しして、CSリレーションズの経営計画書の第一号が誕生しました。それから20年になりますが毎年バージョンアップさせて発行しています。ここには会社の考え、方針がすべて掲載されていますし、全社員がボロボロになるまで読み込むことを求められています。まさに当社のバイブルです。
それからですね、会社が少しずつ変わり始めました。
「いつまでおれはこんなことやってんだろう」から抜け出せた。
当時社長とはいえエースで4番ですから、常に最前線でした。取引先との付き合いでゴルフをしているときもひっきりなしに現場から電話です。「これどうしたらいいですか。」「あれどうしたらいいですか。」電話しながらパター打ってましたね。
ふと思ったんです、「おれはいつまでこんなことやってんだろう」と。いまでも経営者仲間から相談を受けることがあるのですが、営業力のある社長だったら数人スタッフ雇用して回しながら黒字にはできるんですよね。でもそこから抜け出せない。仕事を任せられない。任せたら品質が下がる。やっぱり社長がやらないとダメ。のパターンです。
当社がそれから抜け出せたのはやはり経営計画書のおかげでした。会社の方針、つまり社長の考えがしっかり明文化されていますし、一緒に読み込んでいるので現場がそこから大きくブレないんですね。通信事業も立地に負けてもお客様がわざわざお越しいただける店になり、一つのゴールに向かってスタッフ一人一人が自走し始め、売上も上がり黒字体質へ変わっていきました。
唯一経営者として自慢できるのは、利益の使い方。新店舗出店、採用費、教育費、人件費と会社の未来に全部使ってきた。

おかげさまでこの規模まで成長することができましたし、顧客満足度日本一になることもできました。ありがたいことに外部の方からも「CSさんのスタッフさん素晴らしいですね」と言ってもらえることも増えてきました。
でも「増田さんすごいですね」と言われても全然そんなことはありません。B型のへっぽこです。ただ一個だけ自慢できるとしたら、利益の使い方かもしれません。会社の未来のために全部使ってきました。ときに「使いすぎ」「狂ってる」「危ないよ」と言われることもありました。頭のネジが1本2本外れてるのかもしれませんね。
まずは新店舗出店。携帯ショップとしては異例の広さの大型店を次々と出店しました。そして採用費。あまり外では言えない、引かれるほどの高額な費用を今でもかけ続けています。教育も外部講師による研修ももちろん、毎週1回07:50からの早朝勉強会(自由参加)も、参加者は当たり前ですが全額給与支給対象なので早朝勉強会の人件費だけでも年間1,000万円以上です。そして人件費は、2年前に平均17%上げ、1年前にそこからさらに平均14%上げました。そして今年はさらにそこから平均10%上げる予定です(2年前と比べると+46.7%UP)。
でも大事なのはお金の額ではないと思います。それこそ私も経営計画書を買わなかったら、2万5千円浮いたので家族と外食にいけたかもしれません。ちなみにその当時は家族で外食などほとんどできていませんでした。でも経営計画書を優先しました。せっかくがんばって50万円に増えた給料を25万円に下げて新しい人を採用しました。50万円から25万円の減給ですよ。しかも何度も。採用費を少し節約したら新しい車を買えるでしょう。それでもやっぱりそれはできません。2万5千円でも25万円でも1,000万円でも1億円でも同じです。社長が利益をどこに使うか、それで会社の未来が決まると思います。
どうして投資できないか、失敗したくないと思ってるから。採用も失敗の繰り返しから。
どうして未来に投資できないのかなと考えると、ほとんどの人は失敗したくないと思ってるのかなと。でも最初からうまくいくことなんてありません。1回失敗して2回目も失敗して3回目も失敗して、でも少しずつ工夫しながら続けていくとちょっとコツをつかんで4回目になんとか形になる、くらいでいいんじゃないでしょうか。
失敗を怖がらなくなるだけで、もっともっと会社を成長させられる力のある社長いっぱいいますよ。優秀な社長なのにもったいないな、と思っています。
ちなみに今でこそ優秀な人が採用できるようになりましたが、起業当初は面接に原付に乗ったヘルメット半かぶりの兄ちゃんが会社の前をブンブン言わせながらやってきて、まあドタキャンしないで面接来るだけで採用ですよ。「明日からよろしくね」といって見送るも翌日の朝になっても来ない。連絡もない。その子の家に行ってピンポン鳴らしたら、髪ボサボサで「あー今起きましたー」と。「もういいから車乗れ。朝飯は車の中で食え。」って連れてくるようなレベルでしたからね。
コロナ禍でコミュニケーションの質が低下するなど課題が山積み
いまはこれだけの規模になりましたが、まだまだ成長途中で、問題も山積みです。最近ではコロナ禍です。コロナ禍にもかかわらず当社は過去最高益という結果を出しました。航空、旅行関連、ウェディングといった学生の人気業界が軒並み大変になったこともあり、採用でも大成功と言える結果を残せました。
そこで社長の私が油断してしまったんでしょうね。油断したつもりはなかったんですけど、やっぱり緩んでしまった。
コロナ禍はコミュニケーションがオンライン中心になりましたよね。するとなんでもかんでも「オンラインでいいや」ってなるんですよね。でもどうしてもオンラインだけだとコミュニケーションの質が低下します。社員旅行もなくなりましたし、食事をする機会も減りました。上司と部下の関係性が薄くなってしまうと、会社に魅力がなくなります。そして退職が増えます。
ちなみにもし会社のみんなとあまりうまくいってなくても、たった一人だけ自分の上司だけには魅力を感じ尊敬できているとしたら、その子は辞めません。それくらい上司と部下の関係性は大事なんです。それがコロナ禍をきっかけに崩れてしまった。すべては、その状態に早く気づいて修正して全社員にやり切らせることができなかった社長の私の責任です。
権限委譲という最大のテーマ、そして最大の壁
現在は少しずつ権限委譲に取り組んでいます。やっぱりCSリレーションズという会社がいつまでも続いて、社会のお役に立ち続けて欲しいと思います。これがまた難しい。人によっても違う、案件によっても違う、タイミングによっても違う。正解はないなかでそれこそ何度も失敗しながら挑戦を繰り返しています。私にとって最重要なテーマでもあり、最大の壁ですね。
また並行して新規事業としてスモールビジネスを立ち上げていきたいと考えています。ただ当社では独自のビジネスモデルといったことをあまり重要視していません。優れた商品・サービスを圧倒的な接客で提供するのが得意です。例えば直近ではパーソナルジム事業を立ち上げました。効果の高いパーソナルジムサービスを当社の接客により満足度No.1に育てたいと思っています。将来的には社員が経営者となって事業を受け継いでいくような社内起業のような形につながることを期待しています。
日本商店会の良さ、勝川会頭に期待すること
日本商店会ではたくさんの経営者と関われるのが楽しいですね。イベント絶対参加といったこともなく、もちろん参加したら楽しく学べますし。いろんなステージの経営者がいるので多様性もあります。たくさん失敗してきた私の経験が少しでもみなさまの参考になればうれしいなと思います。
最後に現在5代目会頭の勝川社長、本当に頼もしくなりましたよね。入会したときのおどおどした感じがなくなってオーラが出てきた。いい意味でおぼっちゃん気質を活かしてると思います。もともと持っていたいいところが、日本商店会に入って外に出てきたんだろうね。勝川会頭に期待するのは、そういう人をもっと増やして欲しいかな。会員の方にみんながそれぞれの強みを活かせるようなサポートをして欲しいです。もちろん私も二代目会頭として全力でサポートさせていただきます。

